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最高裁判所第二小法廷 昭和41年(オ)600号 判決 1967年11月10日

上告人

右代表者法務大臣

田中伊三次

右指定代理人

高橋正

他四名

被上告人

曾我義彦

被上告人

案浦金好

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人上田明信、同中村盛雄、同高橋正の上告理由について。

交通事故による傷害のため、労働能力の喪失・減退を来たしたことを理由として、将来得べかりし利益喪失による損害を算定するにあたつて、上告人の援用する労働能力喪失率が有力な資料となることは否定できない。しかし、損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を填補することを目的とするものであるから、労働能力の喪失・減退にもかかわらず損害が発生しなかつた場合には、それを理由とする賠償請求ができないことはいうまでもない。原判決の確定した事実によれば、白石信義は本件交通事故により左太腿複雑骨折の傷害をうけたが、その後従来どおり会社に勤務し、従来の作業に従事し、本件事故による労働能力の減少によつて格別の収入減を生じていないというのであるから、労働能力減少による損害賠償を認めなかつた原判決の判断は正当であつて、所論の判例に反するところもない。論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)

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